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タツキに言われるまま、ぺこりと頭を下げてその場を後にするシェリーの背中を、アドルフは静かに見守っていた。ちなみに、アドルフの目にはタツキの姿は非常にはっきり映っている。タツキはやれやれと再び神の椅子を陣取ると、そのまま大きな欠伸をした。言われなければ魂とは分からないほどはっきり映っている。
「あ。ごめんな、オレだけ座って」
「いや……」
「カミサマも悪趣味だよな。自分だけ椅子用意するとかさ。悪気なく魂を見下してんだよな」
声についても、シェリーは頭の中に響いているようだったが、アドルフには生きている者と同じように、耳に直接届く聞こえ方だ。生前の生命力が窺える。
「……して、私に話とは」
「ああ、そうそう」
腕組みをするアドルフの前で、タツキはひょいと足を組む。
「オレ、さっきシェリーちゃんには、自分が中に入っても服の内側は見えないって言ったじゃん。実はあれ、半分嘘でさ」
「ふむ?」
「実際は体内が透けて見えてるんだ。骨とか、内臓とか、細胞とか、そういうレベル」
「……顕微鏡のようなものかね」
「良い例えだね。多分そんな感じだ。で、シェリーちゃんなんだけど、ここのところは息切れが多いんじゃねえか? 心臓が気になる。疾患が認められる、というか」
アドルフは一瞬、絶句した。
「そんなことが分かるのかい」
「オレ、医療免許持ってるんだよね。本業の補佐が出来る程度のやつ。心不全……とか起こすにしてはまだ若いけど、実は予兆だと嫌だろ。体調、気を付けてあげて。な」
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