ときわたり

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 遠い昔、騎士の試験を受けたとき。試験で特別扱いされていると疑われたレオンは、その場で自分の左腕に深く傷を入れ、その腕で試験を通過した。そのときの傷はまだ残っていて、今でも、何か大きな決断をする度に鈍く痛む。  ただ、今の痛みがそれによるものかは分からない。何せ、雷を剣で撃ち返す大仕事を済ませたあとだ。そのとき地上にいたフローラによると、突然天から光が降り注いだように感じたという。顔を上げたら、目の前の患者たちは症状を忘れてケロリとしていたのだそうだ。フローラとしては、それが誰の功績なのかを説明したかったようだが、レオン、及びトウガが二人して拒んだ。レオンのみならず、トウガも目立つのはあまり好きではない。  レオンとしては、ギルドに少し立ち寄ったら、すぐに発つつもりだった。しかし、左腕の様子をフローラに一目で見抜かれて、ギルドの医務室に連れてこられた。そのまま腕の治療を受けたあとは、半ば強制的にベッドに寝かされている。寝ていないとフローラに柔らかく注意されるので、仕方ない。
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