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「フローラさん、失礼します」
「兄ちゃん、いる?」
続いて静かに入ってきたのは、エリックとトウガ。扉を開けたエリックの真後ろから、トウガがひょこっと顔を出していた。それを受けて、レオンも身を乗り出す。フィルとイライザがほとんど同時に道を開けたので、トウガが会釈しながらその中心を通った。
「トウガ君」
「兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。本当に腕だけなんだから」
「でも、左は利き腕だろ」
「右でも剣は取れるようにしてるし」
「そういう問題じゃなくて!」
「冗談だよ。ちゃんと処置してもらってるから、すぐ治るさ」
言葉の返し方がタツキ君みたい、とフローラがくすくす笑う。フィルやイライザも、懐かしいと目を細めていたが、トウガの方は、笑い事じゃないですと少しむくれていた。
「トウガ。お前、そんなこと言いに来たわけじゃねえだろ」
エリックが仏頂面で腕を組む。
「挨拶に来たんだろ」
「ああ、そうそう」
エリックに諭されて、トウガも改めてレオンに向き直った。
「おれ、水の国に行ってくる」
「ヴィクトルに会うんだね」
「雰囲気的にさ。今までみたいなお忍びじゃなくて、ちゃんと王子として行かないといけないみたいなんだ。慣れないけど、頑張ってくるよ」
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