ときわたり

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 え、とシェリーは目を見開く。 「お、弟さん……」 「本人が唯一気にしてたのが、弟の行方だったんだよな」  タツキはやれやれと頭をかいた。 「よりにもよって、あんなところに」 「完全に取り込まれてるんですか?」 「だろうな。出たくても出られない感じ」 「……」 「まあ、弟一人くらいなら、オレが連れてこられると思うよ。ちょうどこんな身体だし。ただ、そこだけ救うのも本意じゃねえだろ。星喰いを元からどうにかしねえと」 「そうですね……。嘆きの園ってくらい、いるんですものね」  シェリーは両手を祈るように組む。得体の知れないものに取り込まれて動けない魂がたくさんいるだなんて、天界の民としては耐えがたいことだ。タツキだって、下手にそんなものに近付いたら自身が飲み込まれるかもしれない。それはシェリー個人として耐えがたい。 「ちょうど、ウラノス様も回復してきています。明日辺り、少し話をしてみましょうか」 「あいつ、役に立つのかなあ」 「仮にも神ですよ。それに、今回は『人間に』肩入れするわけではありません。ご自身の業務にも関わりますから、協力していただけると思います」
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