ときわたり

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 ウィルもしょっちゅう同じこと言うんだよな、とぼやきつつ、フィルは大袈裟に咳払いをしてみせた。 「来るぞ」 「はい?」 「これは嵐の前触れだ」 「なんですか。フィルさんってば、また暴れるんですか」 「おれが暴れるんじゃねえよ! あとまたってなんだよ!」 「あなた、歩く暴風雨じゃないですか。で?」 「調子狂うなあ……。良いか、真面目に聞けよ。これはな、おれがあの人の部下だったから分かることだ。お前の身体から感覚が抜けた。つまりそれは、あの人がお前に自分の感覚を預ける必要がなくなったってことだ。これがどういうことか分かるか」 「そうですね」  トビアスは、鞄の紐をきゅっと締める。 「自分で動けるようになったって話でしょうか」 「おれはそう見るね。ララが表してる通り、復活自体はしている。レイラさんも『成功してる』って言ってるしな。ただ、あの人自身は行方知らずだっただろ。まあときどきは現れるらしいけど、神出鬼没っつうかさ。そこら辺も解決の糸口が見えてくるんじゃねえかと……おれはそう思うんだ」
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