るりのおうじさま

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 そこかしこで色とりどりの海藻が踊り、魚たちがついと横切っていく。ただ、オットーを担いだ状況では、そんな景色を楽しむ余裕もなかった。トビアスと二人して、オットーに声を掛けながら、一歩一歩着実に歩む。  ただ、トウガはエルフ族という特性上、あまり力がない。すばしっこく走り回るのは得意だが、重いものを持つ筋力には欠けている。それでもトウガはオットーを担ごうとしたが、途中でトビアスが見かねて、一人でオットーを背負った。トウガは自分が情けなくなって、ポリポリと頭をかく。 「……ごめん」 「良いんです。適材適所ってやつですよ。トウガさんは周囲への警戒をお願いします。俺より耳が良いですし、俺より強いわけですし」 (トビアス君、強いけどなあ)  トウガは首を傾げる。  少なくとも、四番隊は肉体労働をフィルとトビアスが担当しているし、トビアスもフィルと二人で打ち合える程度の実力は持っている。トウガに簡単に負けるとも思えない。だが、トビアスはどうも、自分よりトウガの方が強いと確信を持っている節がある。トウガとしては、若くして器用に何でもこなすトビアスの才能は羨ましい限りなので、この評価は不思議だった。
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