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「あれー?」
明朗な声に、一同が振り返る。背後から馬車が駆けてきていた。海底王国にも馬とかいるんだ、と感心するトウガの横で、オットーがあ、と口を開きかけた。それより早く、オットーを片手で担いだままのトビアスが、馬車に向かって大きく手を振る。
「叔父さーん!」
「叔父さん? ってことは」
馬車が三人の脇で静かに立ち止まる。中から、もじゃもじゃの栗毛をした、くりっとした顔の青年が顔を出す。
「やっぱりトビアス君だー!」
「叔父さん、久しぶり! 奇遇だね、こんなとこで」
「ほんとほんと! ……彼は酔っちゃったのかな? もう一方のそちらはお友だ」
言いかけた青年は、トウガの顔を見て思いきり目を丸くした。トウガが会釈するより先にひっくり返る。
「ええええ!? タツキさん」
「あ、いえ、息子です! 父ともお知り合いで?」
「息子さん……」
呟いた彼は、そうだよなあ、と小さく独り言を零した。
「……そうですよね。タツキさんはもう……。失礼しました。息子さんとなると、トウガ様ですね」
「様って柄じゃないんですけど……」
「いえいえ、王子様ですからね。申し遅れました。私はモールと申します。今し方、柘榴との会談から戻ったところでして。お父上には、以前大変お世話になりました。あんなことになってしまって残念です。お気を強く持ってくださいませ」
「ありがとうございます」
(死んだ気がしないことはまだ黙っておこう……)
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