るりのおうじさま

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 トウガはてっきり、都の中も馬車で縦断出来るものと思っていたのだが、馬車が行けるのは正門の前までだったので、結局は正門で馬車を降りて、門番に顔を知られることとなった。  どこに行ってもまずはタツキと間違われて、都度訂正する流れが待っている。王子を見たがる一般の民に取り囲まれると、トビアスとオットーが左右を固めた。三人の前はモールが行き、道を空けるようにと指示している。常時守られっぱなしのトウガは溜め息しか出なかった。 「全くもう……みんなには頭が上がらないや。こんなのも一人で撒けないなんて、先輩として情けない限りだよ」 「何にも情けなくないですって」  トビアスが明るく答える。 「何度も言いますが、トウガさんは王子様です。俺もオットーも、王子殿下の側近の身内なんです。こうなるのはいろいろと正しいですから、堂々としていたら良いんですよ」  王子様、と外野から声が掛かるので、とりあえずトウガも手を振る。それだけで、きゃあ、と甲高い声で歓声が上がった。モール曰く、トウガはタツキによく似た精悍な顔と、クリアやレオンの柔らかい雰囲気を両方持っているので、女性の視線も無理はない、ということだった。
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