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「まあ、でも、トウガさんにはねえ。想い人もいますしねえ」
「想い人?」
オットーとモールが同時に首を傾げる。トウガは少し上擦った声でトビアスに詰め寄った。
「ちょ、何の話さ」
「まあまあまあまあ」
なるほど、本当ならばめでたいですね、と生真面目に考え込むモール。気にしなくて良いからと彼を説得しているうちに、一同は客室に辿り着いていた。
否、客室なのだろうか。考えてみれば随分上層階まで来たし、扉だけ見ても装飾が細かく、他の部屋と雰囲気が違う。これはもしや、とトウガが考えるより先に、オットーが尋ねた。
「もしかして、こちらは王子様のお部屋で」
「ええ。本日は民間にもトウガ様がいらしたと知られていますからね。一般の客間にお通しするわけにも参りません。こちらはケイオス様が幼少期から使っておられるお部屋になります」
「おおお……すっげー体験」
トウガは声が出なかったが、トビアスは興味津々の様子だ。モールは微笑み、扉を押して静かに開ける。
「どうぞ」
「鍵とか掛かってないんだ」
「おそらく掃除中です。ほら、バルコニーに人がいる」
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