彼の章

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月曜日にはこの課題を提出しなくてはならない。土曜日のお昼前にあくびをしながらキャンバスに向かう。描くものは決まっていた。青空に際立つ雲、そしてその下に立つ彼女の姿だ。美術の授業で隣同士になっただけの彼女に僕は惹かれていた。この絵を見せて彼女に告白する。そう決意を固めていた。 絵の具を取り出しいざ描かんとした時に「あれ」と僕は思った。白の絵の具がなかったのだ。金曜日の授業の時にはあったはずだ。だが、今は白の絵の具がない。これでは雲が描けないじゃないか。 僕は服を着替えると急いで家を飛び出した。今なら行きつけの画材屋が開いてるはずだ。 小さな画材屋だが、品数は豊富だ。扉を開けるとすぐにいつも使っている絵の具のコーナーに駆け込んだ。白の絵の具を握りしめたその時に信じられない出来事に遭遇した。
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