2. 野良

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それ相応のダメージを負ってしまった。 よろよろと歩く彼を見る、世間の風は冷たい。 汚いものを見る人間たちの目、目、目。 彼は人間たちの群れが二手に分かれる中を 傷ついた身体で、堂々と歩いた。 不意に眼に血が流れ込み、ふらついた。 そこにあの大きな人の乗る 自転車と言うやつが、突っ込んできた。 何とか避けたけれど、身体は勢いあまり どこかの店に置いてあったレンガのブロックに 突っ込んでしまった。 黒猫は横たわったまま、弱いうめき声をあげた。 さすがの彼も、その時は息が詰まって動けなかった。 カラスの奴でも来たら、具合が悪いことになったはずだ。 「あら、黒猫」 上の方から人の声がした。 人間の女。それだけは分かった。 そいつはいったんどこかに消えると やがて手に清潔な白い布を持って戻ってきた。 布を広げて床に敷くと、女性は黒猫をゆっくりと 両手で持ち上げて、布の上にそっと置いた。 それだけして、女は去っていった。 手当はされなかった。 皆はこの女を「冷たい」と思うだろうか? いや、この人間は自分たち猫族をわかってるヤツだ。 猫は、過剰な世話やサービスを嫌がるんだ。 施しは少しだけ。 あとは自由な選択肢があれば、それでいい。 いつもなら、触られることを嫌がるのだけれど     
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