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それから。何度も公園の前を通ったけれど少女に会うことは無かった。雪が積もって、積もって、雪だるまの上に雪が降り積もり重みに耐えられず崩れ落ちてしまっていた。さみしい気持ちになって雪玉を掘り起こし再び乗せてやり、雪で湿ったマフラーと耳当てをしてやった。歪な、壊れた雪だるまにしかならなかった。
雪は溶け、春が芽吹く。
残雪を残した公園、けれど影に隠れるようにして隅に少しだけ固まっているだけだ。雪だるまはもうどこにも居ない、湿ったマフラーと耳当て、ボタンすら消えていた。ゴミとして処分されてしまったのだろう。たった数回しか会わなかった不思議な女の子。彼女は本当に妖精だったんじゃないか。なんてバカなことまで考えてしまう。ベンチに腰掛けて空を見上げる、雪が降っていた冬の白い空でなく。春の柔らかい日差し。
「あの。…もしかしてあなたがおにいさん。ですか?」
声が聞こえて視線を戻すと、其処には50代くらいのおばさんがいた。後ろには彼女と同じ年頃のおじさんもいる。ああ。目元が彼女に似ている。
「この公園で出会った雪だるまの妖精はそんなふうに呼んでくれました」
答えると、不思議そうにお互いを見る。
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