白に溶ける

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なんだこれ、昨日もこんなやり取りしただろう。彼女もそんなふうに思ったのかくすくす笑った。へんなおにいさん。だって。そこまで同じにしなくてもいいだろう。俺は自分のしていた手袋を脱ぐ、雪を触るわけではない、貸しても少し自分が寒くなるだけだ。 「これ貸すよ。また会う時があったら返して」 すっぽりと彼女の手に手袋を被せる、サイズがあっていなくて布が余ってしまっている。それがおかしいのか彼女は手を閉じたり開いたりを繰りかえした。それじゃあおにいさんの手が寒いんじゃないの?と聞いてきたけれど、俺はまた大丈夫だと返事をして、公園につけられた時計を見て慌てた。もうこんな時間だ。昨日はまだ時間に余裕があったが今日はのんびりしていられない。俺はこれからバイトがあるのだ。慌てて公園を出て行く、少女はいってらっしゃい。と小さな手に不似合いな手袋をつけて手を振って見送ってくれた。 日は沈んだなか俺は歩く、今日のバイトは厄介な人が来て大変だった。と白い息を吐きながら素手を少しでも温めようとこすり合わせて息を吹きかけて、帰路を歩く。公園に差し掛かって視線を向ける。今朝見た時よりも少し雪玉が大きくなっていて思わず笑みをこぼした。何を思ったのか俺は白に沈む公園に入りその雪玉をさらに転がしてやった。再び公園に降り積もった雪を全部くっつけてやろう。なんて馬鹿なことを考えて、子供でも無いのに素手で雪玉を転がして、気づけば手は赤くなっていた。 「何やってんだ俺は」     
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