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言葉に出して時計を見上げれば時刻は夜の8時を指していた。馬鹿じゃないのかと自分を嗤ったけれど、あの少女がどんな反応を見せるのかを想像して、さっぱり思いつかないことに笑った。
次の日の朝。今日はバイトが休みの日。だからあえて寒い中をほっつき歩かなくてもいいのだが俺はあの少女のことが気になっていた。今日もまたいるのかもしれない、今日こそは自分の上着を着て返してくれるかもしれない。俺が転がした雪玉にどんな反応を示すのか見て見たい。そんな思いから、特に用事もないのに公園へと足を向けた。雪が降っている。公園に着くと少女が不似合いな緑のジャケットを着て雪玉を転がしていた。
「おにいさん!」
彼女はすぐに俺を見つけると雪玉から手を離して俺のほうへと寄ってきた。
「おにいさんでしょう?雪玉を大きくしてくれたの」
「さあ?自分で転がったんじゃないか?」
俺の返答に目を丸くして、くすくすとそうかもしれないね。なんて笑う。
「あのね、もうひとつ雪玉をまるめたの。これを乗せるのを手伝って欲しいのよ」
少女がこれとさす雪玉は昨日俺が転がして量を増やしたものよりも小振り。彼女が何をしたいのか一瞬で理解した俺はよし。と小振りな雪玉に近づいた。
「いいか?せいのであげるぞ」
「うん」
少女が腰を下げて雪玉をしっかりと支えたことを確認してから声を上げる。
「…せーのっ!」
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