白に溶ける

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少女の力は想像の通り弱く、俺ひとりで持ち上げたと言ってもいいだろう。それでも土台となる雪玉のうえに雪玉を重ね、完成した雪だるまはこの少女が作ったものだ。 「ありがとうおにいさん。あとは顔をつけるだけよ」 そうは言うが、この雪のなかに雪だるまの顔になりそうなものなどあるだろうか。少女はきょろきょろ視線を動かしながら公園の雪を踏みしめて足元を探す。雪、雪、雪、あるのはそればかり。落葉樹が植わっているが枝を折るわけにもいくまい。 「そうだ」 ちょいちょいと少女を招くと首をかしげたものの此方へやって来た。 「そのジャケット、ボタンが付いてるだろ。それを目にしよう」 言うと少女はびっくりする。 「そんなことをしていいの」 「勿論。また別のボタンをつければいい」 少女の視線まで屈み、ボタンを切ることに決めたがハサミなど持っていない。どうしよう。 「おにいさん。わたしね、ソーイングセットを持ってるのよ」 「そりゃ好都合」 少女は俺のジャケットのポケットから、そのジャケットに似つかわしくないソーイングセットが出てきた。 「この間。おかあさんがくれたのよ。嬉しくてずっと持ってるの」 にこにこと少女が笑う。うーん。そのおかあさんはこの子が真冬の公園にワンピースひとつで立っていたことを知っているんだろうか。 「そう。、はい取れた」     
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