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「あの…やっぱり他で探してみます…ー」
そそくさとその場を後にしようとすると健太に腕を掴まれて阻止される。
「梶様、今日は内覧のご予約でしたよね?何件かご案内させていただきますのでまずはこちらのアンケートをご記入いただけますか?」
相変わらずの強引さだ。
捕まると逃げられないのは分かっているので観念して案内された椅子へと座る。
そう、僕はある事情があって引っ越しを余儀なくしなければならなくなった。
それでインターネットで良さげな物件があったので内覧希望を出し、今日その案内の日でお店にきてみるとずっと避けていた健太がいるお店だった。
内覧希望の予約の時に名前、電話番号、住所諸々入力が必要で健太にはバレている。
逃げ場がなくなってしまった。
腹をくくりとりあえずアンケートを書いていると
「悠里久しぶり、逃げるなんてつれないな。昔は可愛かったのに」と耳打ちしてきた。
僕はビックリして真っ赤になりながら耳を隠す。
「梶様、どうかなさいましたか?」と悪戯に笑う健太に心臓がバクバクと脈を打つ。
「うるさい…」
健太と自分の心臓に怒りをぶつける。
アンケートを書き終わり「ほら…」と渡す。
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