21人が本棚に入れています
本棚に追加
健太はアンケート内容を見つめ「ふーん」と呟く。
「ま、いいか。では梶様、ご案内いたしますのであちらの車にどうぞ」と営業スマイルを見せる。
「どうぞ」と後部座席のドアを開けてくれる。
健太が僕に優しいとなんか企んでるんじゃないかと怖くなってくる。
「一応シートベルトをしてくださいね」
と言い残し運転席へと乗り込む。
出発してしばらく無言が続き、沈黙を破ったのは健太だった。
「車内の温度大丈夫ですか?何かあったらおっしゃってくださいね」
とバックミラー越しに目を合わせてくる。
忘れかけていた感情がドクっと脈をうつ。
「大丈夫…ってかその喋り方やめて…ー気持ち悪い」
無愛想に言うと「いえ、お客様ですから」と返される。
「免許取ったんだね」沈黙が嫌で話しかける。
「社会人ですからね、何かと必要ですので。梶様は持ってらっしゃらないんですか?」
「持ってない…ー駅近いし在宅ワークだから必要ない」
「そんなんですね、高校卒業以来お会いしてないのでどこか遠くへ行ってしまっていたのかと思いましたよ」
バックミラー越しでも分かるくらい目は笑っていなかった。
げ、怒ってる…ー
「ちょっと色々忙しかったから…ーー」
不自然に視線をそらしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!