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プロローグ
『魔法の力でなんでも解決ー!!魔女マホ参上!!!』
『悪いやつらよ飛んでいけーー!!シャーイニー☆シューート!!!』
テレビを見ていた。映っているのは仮想の物語、金色の髪の毛をした女の子がなにかと戦っている。
今自分が見ている物語は現実ではないということには薄々気づいていたが、それでもこのテレビに映っている¨魔女¨は実在すると心のどこかで信じていた。
テレビの中の憧れの彼女はピンク色の大きな帽子を被り、人々を魔法の力で助け、悪さをする悪い魔法使いと戦っていた。わたしはそんな彼女を、彼女の物語を一人で見守っていた。元気いっぱいで衣装がかわいくて、魔法の力でなんでも解決してくれる、そんな魔女の物語がわたしは大好きだった。特に彼女の帽子が大好きで、自分で紙で作って今も大事にその帽子を被っている。
cmになり物語が一時中断され、よくわからない車のコマーシャルが流れはじめたのを見てふとかけたててあるぼろい時計のほうを見る。短い針が10を、長い針が6を示し、部屋の外は真っ暗な闇に包まれている。
cmが空け魔女の物語が再開される そしてわたしはテレビに吸い付くように彼女の物語の続きを見ていた。
そんな時、キィーと古い扉が開いた音がした。一気に部屋に流れ込む冷気を帯びた風と酒臭い悪臭。
顔を真っ赤にした父親が帰ってきたのだ。
「おい努!!!またあのアニメなんか見てやがったのか!!!男がそんなもんみてんじゃねえよボケが!!!!!」
楽しかった最高の時間が父親の怒号と巨体から放たれる蹴りで終わる。
父の蹴りをお腹にうけうずくまる 今日食べたものを戻しそうになるのをぐっとこらえた。
「ご。ごめんな……さい」
「男ならしゃきっとしろ!!!」
「はい・・・・・・」
こんな生活が、毎日のように続く わたしの名前は三木努。 性別は ¨男¨だ
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