第三章 不吉な訪問者

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第三章 不吉な訪問者

 夜になったが、どうにも落ち着いて眠れはしなかった。ある日突然何かから生まれ変わって、死にかけて拾われて、家族が出来て…突拍子もなさすぎて落ち着いていられる訳がなかった。眠れない私を思ってのことだろうか、母がある絵本を読み聞かせてくれた。 『むかしむかしあるところに、大変立派な王様がおりました。 王様は二人の息子と、一人の娘と、それは美しく優しい王妃様に恵まれていましたが、王妃様は大変体が弱く、王様の誕生日の前日、急に容態を悪くして倒れてしまいました。 王様は王国一番の名医を連れてきて懸命な治療を行わせました。 王様も、子供達も、国民達も、皆王妃様のご無事を願いましたが、願いは届かず王妃様はそのまま帰らぬ人となってしまわれました。 王様は大変悲しみました。王妃様のご遺体の前で何時間も泣きました。 その日の夜、王様は一人の優秀な兵士を呼び出し、王妃様の治療にあたった医師を殺させてしまいました。 王様は呟きました。 「あの医者は妻を救わなかったから処したのだ」     
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