白・冬

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 かろうじて進学校だが、授業のレベルが物足りない。同級生の会話がくだらない。何気に兄が東大に通っていると話したら、翌日から僕に色目を使い始める女子が現れて、度肝を抜かれた。僕の頭越しにまだ会いもしない兄を見ている。げんなりだ。落胆し、そんな自分に幻滅しまた落胆する。僕のぺらぺらのプライドは傷だらけで、尖った氷のような怒りの塊を腹の中で持て余していた。  コンビニの店内は客がまばらだった。棚越しに伺うと、レジに店員の姿はなかった。深呼吸してから無造作に目の前の乾電池のパックを制服の尻ポケットに突っ込む。何気無いそぶりで自動ドアへ向かった。  と、後ろにコートをぐいと引っ張られた僕は、コンビニを出るまであと一歩というところで足を止めた。無言で振り返る。内心ドキドキでとてもじゃないけど喋れなかっただけだ。  コンビニの制服姿の女性が立っていた。にこりと笑って、僕の尻ポケットに手を伸ばし、止める魔もない早業で乾電池のパックを抜き取られた。 「今日は見逃してあげるけど、次にやったら分かってるよね?」  目が笑っていない。  顔を強張らせて僕が頷くと、女性はにっこりとした。笑うと池でもできそうなくらいくっきりとしたえくぼが彼女の両頬にできたのが印象に残った。そのまま「ありがとうございましたー」と彼女が言った。出ていけということなのだろうと察した僕はその声に押し出されるようにしてコンビニを出た。 家に帰ると母が台所に立っていた。 「ただいま」  応えを待たず階段を上る。上がって廊下の左側が僕の部屋。向かい側は兄の部屋だ。右のドアがガチャリと開いた。     
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