2人が本棚に入れています
本棚に追加
視界の果てまでなだらかな丘が続き、背の低い草花が敷き詰められている。所々にかわいらしい家が建っていて、土がむき出しになった道でつながれている。近くに生えてい木には、赤い果物が実っている。
「こんにちは、お嬢さん」
振り向くと、ウサギの顔をした人が立っていた。顔や手はフカフカの白い毛で覆われていて、耳はピンと長くどう見てもウサギだったが、二足で立ち、ちゃんと服を着てエプロンまで付けている。いい匂いを漂わせるアップルパイを持っている。
「私の子供になって。お料理が得意だから、お菓子もご飯もあなたが好きなものをいっぱい作ってあげる」
ウサギの人は、私にアップルパイを差し出して微笑んだ。訳も分からず茫然としていると、今度はリスの人が横から割り込んできた。
「待って、私の娘になってよ」
フワフワの長い尻尾がついている。触り心地がよさそうだ。
「私は旅商人をしているの。綺麗な場所や楽しい場所へも行くわ。一緒に旅をしながら楽しく暮らしましょう」
優雅に揺れる長い尻尾にどうしても目がいってしまう。
「オシャレには興味あるかしら?」
後ろからした声に振り返ると、ヒツジの人がいた。
「私は手芸が得意なの。洋服やアクセサリー、愛する娘のためならいくらでも作るわよ」
困惑している私に男の子が言った。
「君の新しいママ候補だよ。君の好きなママを選びなよ」
ママ候補たちはにっこりと笑っている。
「大丈夫、心配しないで。選ばれなくても、誰も怒ったりしないから」
ウサギの人が、そう言った。
「私たちはあなたが大好きだから。怒らないし、永遠にあなただけが一番よ」
リスの人が言った。
「ずっとあなただけを愛してるわ。だから、さぁ、選んで」
ヒツジの人が言った。
私は思わず首を振った。男の子が不思議そうにくびをかしげる。
「好みのママはいなかったの?。やっぱり人間の方がよかったのかな。じゃあ、新しいママ候補を……」
「ちがう!」
最初のコメントを投稿しよう!