寝坊なんです

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隣の車両に足を引きずりながら移動して、切符に書いてある番号に座った。切符をまじまじと見る。BはビーフのBだろうか。ならばCはチキンのCだろうか。AからFまであるけれど、それぞれ食べ物が違うのだろうか、。Aは赤貝かな。Fはフリスクだろうか。せっかくの機内食なのにフリスクだったら嫌だな。 俺はとりあえず新幹線に乗るのに疲れていたのでリクライニングを最大にした。ガタン。 「ちょっと、なんなんですか」 うしろから声がかかった。俺は席から顔を出し、うしろを振り向いた。 「あのね、あなた、そんな急に倒したらダメでしょう。何か一言あるべきなんじゃないですか」 ああ、そうか。しまった。 「すいません。ビーフ、オア、チキン?」 後ろの学生風のお兄さんは怒っていた。 「ビーフでもチキンでも関係ないでしょう。今急に席を倒したから、コーヒーが溢れたじゃないですか。もう。携帯にかかったじゃないですか」 たしかに携帯が茶色くなっていた。俺はその携帯を掴み取り服の袖で拭って返した。 「うーん、コーヒーくさいかもしれないけど、使えるんじゃない、じゃあ」 俺はそう言って自分の席に深々と腰掛けた。 「いや、あのね、そういうことじゃないでしょう」 また後ろのお兄さんが何か言ってきた。しょうがないから顔を出して振り向いた。 「まだ何か?」 「何かとかじゃないでしょう。謝ってくださいよ。それにコーヒー弁償してください。そうするのが本当でしょう」 本当が何か知らないけど、俺は新幹線でゆっくりしたかったしお腹も空いていた。 「わかりました。謝ります。すいません。コーヒーは今持ってないので、行きつけの喫茶店のコーヒーチケットあげます。ここのコーヒー美味しいですよ。マスターの娘さんは美人だし。エクボが可愛いんですよ」 俺はお兄さんにコーヒーチケットを一枚ちぎって渡した。彼はそのチケットをジロジロ見た。 「知らない名前の喫茶店だけど」 「うちの地元の知る人ぞ知る喫茶店なんで、そこでしか使えないですよ」 「そんなのもらってもしょうがないでしょう。有名チェーン店のやつじゃないと、使えないでしょう。エクボのステキな娘さんには興味はない」 「そうなの。あなた、あっち系?ゲイの方?」 最近はゲイの人も増えてきてるから、看板娘と一緒に看板息子も置いとかなきゃならないね。
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