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起きたらちょうど出発の10分前だった。携帯電話を見た。仲間から電話が何十回もかかってきている。
「もしもし、今起きた。俺どうしたらいいと思う」
俺は一緒に東京に行くはずだったMに思わず聞いてしまった。
「チケットは持ってるんやろ、それとお金。それさえあれば後で合流できるんちゃう」
Mは淡々とした口調で答えた。できるタイプの人間だ。決してパニックにならず、現実に即して行動する。それがなんだか冷たい印象になるのは、俺ができない人間だからだろうか。
「どうやってやるの。俺、新幹線、乗ったことないねん」
俺はMとは違って、完全にパニック状態で電話しながら牛乳を飲もうと冷蔵庫を開けていた。
「そんなん駅員さんに聞いたらええねん。駅員さんはお客さんには親切やで」
牛乳をパックのまま飲もうとして、鼻に入って、気管に入ってむせた。ブハッ、ブハッ、ゲホッ。
「何してるの、もう出発やから電話一回切るで」
Mはあっさりと電話を切った。
俺はとりあえず溢れた牛乳を拭いて、何か思いつくまで牛乳パックの成分表を眺めていた。
乳脂肪3.8%…だから?
そうや着替えんとあかんやん。とりあえず家から出なあかん。俺は旅行用に準備していたセーターとパンツをはいて家を出た。
マンションのエレベーターを待ってて、時間を見ようとして携帯を家に置いてきたこと気づいて、取りに帰った。
家に入ろうとした時に裸足だったことに気づいて、裸足のなんとかっていう曲が浮かんだが、誰の曲だろうと調べようとして、スマホを取りに来たことを思い出した。完全にパニックになっている。
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