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俺は片足を引きずりながらマンションを出て、道路脇に立ちタクシーが通りかかるのを待った。
この辺は交通量も多く普段からタクシーがよく通りかかる。俺は足が痛くて、歩くのが嫌だった。
緑色のタクシーが通りかかったので、手を上げようとしたのだが右手を上げるか左手を上げるか考えているうちに、タクシーが通り過ぎてしまった。よし、もう迷わないように、右手をずっとあげていようと心に決めて、それから次のタクシーが来るまでずっと右手を上げ続けた。
黒のタクシーが止まった。
俺は手を上げたまま、車に近づいた。不意にドアが開いて俺は手をぶつけてしまった。痛かったが、少し血が出ているぐらいで、なんともなかった。俺は血だらけのまま車に乗り込んだ。
「お客さん大丈夫ですか、血が出てますよ。病院に行きますか?」
「ちょっと待ってください。俺は急いでいるんです。もう遅刻してるんです。友達はもう東京に着いてるんです、たぶん」
「お客さんがいいなら、いいですけど、血を拭いてもらってもいいですか」
タクシーの運転手はティッシュを渡してきた。俺はそれで鼻をかんで、運転手に返した。それで服の袖で血を拭った。でも完全に止まったわけじゃな買った。ちょっとずつ滲んでいる。舐めてみた。血の味がする。鉄分の味だ。
タクシーの運転手は険しい顔をして俺に、行き先を聞いた。
「どちらまで」
「新大阪ですよ、もちろん、新幹線に乗るんだから」
当たり前のことがわからないこの運転手は、少し想像力に欠けるのだろうか。俺はもうだいぶ遅刻していると説明したのに。
「新大阪駅でいいですね」
運転手はさっきよりも怒っているみたいだった。何か乱暴にナビかタッチパネル見たいのものにタッチして、ルートを見ていた。
「176号線経由でいいですか」
「それが一番早いのなら、それでいいですよ」
どの道で行くかなんて聞かれても、俺に分かるわけがないだろう。俺は道に詳しくない。詳しいのはプロである運転手のはずだ。素人のアドバイスなんて聞いてもしょうがないだろう。
だけど運転手は怒ったように、勢いよく何かしらのボタンを押した。表示が変わった。
何が気に障ったのか、わからないが、とにかく新大阪駅までは連れてってくれるだろう。またそれまでに血が止まれがいいが、このままではシートが血だらけになってしまう。
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