寝坊なんです

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俺は緑の窓口に行った。何人か行列ができていた。アミューズメントみたいだ。俺も並んだ。 「すいません、乗り過ごした切符で何ができるんでしょうか」 俺の番が来て受付のおじさんに聞いた。 「はあ、すいませんがその切符見せてもらえます?」 俺は切符を渡した。おじさんはその切符をちらっとみて、何かパソコンみたいなものの画面に、キーボードで何か打ち込んだ。 「今朝6時30分発の東京行き、のぞみの切符で間違いありませんか」 「そうなんですか、僕は連れってもらう予定だったので、詳しいことはあんまり…」 おじさんは画面をペンみたいなものでタッチした。 「そうなんですね。この切符は今朝ののぞみの切符です。払い戻しはできませんね。この後出る東京行きのぞみの切符に振り替えますか?」 「どういう意味です?それで新幹線に乗れるんですか」 「そうですね。午後5時35分発ののぞみにしましょうか。時間的にはそれがいいと思いますが」 なんか得した気分だ。俺はまだ新幹線に乗れる人間なのだ。誰も邪魔させない。遅れたって、東京につけば、スカイツリーや浅草花やしきが待っている。そうだ、東京ドームでコンサートをやってるかもしれない。音が外に漏れてコンサートの雰囲気に浸れるかもしれない。武道館でもいい。 「そののぞみでお願いします。のぞみは高く果てしなくっていいますもんね。とんちんかんちんですよね。駅長さん」 「はあ、まあ、そうですね」 駅長さんは画面を見ながらあちこちタッチしていた。なんだかカッコいい。机の脇から新しい切符が出てきた。それを素早く取り内容をチェックしていた。 「じゃあ、間違いなく午後5時35分発ののぞみで。ありがとうございます」 駅長さんは切符を渡してくれた。新大阪、東京って印刷されている。まじか。品川とか浜松町とかじゃないんだ。 「機内食って頼めます?」 俺は思い切って駅長さんに聞いた。 「車内販売員が弁当とか飲み物を販売しております、ご利用ください」 「ビーフ、オア、チキン?」 駅長さんは少し訝しげな顔をした。 「次の人どうぞ」 俺の質問は無視された。牛か鶏か選べるなら、教えて欲しかったのだが。まあいい。その時が来れば自ずと答えがわかるだろう。
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