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俺は切符を自動改札機に入れた。すると切符が向こうに出た。すげえ。新幹線も普通の電車とおんなじだ。めっちゃ大きい切符なのに。磁気ってやつだろう。俺は無事改札を通り抜けた。
そうパスポートはいらない。それぐらい知っている。新幹線ではパスポートはいらないと、旅行前に聞いていたから。俺はパスポートを準備しなかった。
エスカレーターに乗って上に上がり、ホームに出た。新幹線が駐車、駐輪?していた。俺はどの新幹線に乗るべきか悩んだ。
「すいません。俺ののぞみはなんですか」
カトリックのシスターみたいな格好をしたおばさんに聞いた。
「あなたののぞみはわかりません。私たちは世界が少しでも平和に近づくように、毎日神にお祈りを捧げています」
「わかりました。私も私ののぞみが見つかるように、少しお祈りしてみます」
「お願いします」
シスターは去っていった。俺はいつかテレビで見たように膝まづき祈った。"神さま、僕ののぞみはなんですか"
「お困りですか」
さっきとは違う駅長さんが声をかけてくれた。
「僕ののぞみはなんですか」
「ちょっと切符を見せてくださいます?」
とてもゆっくり聞き取りやすいように、話してくれた。僕はそれに合わせてゆっくりと胸ポケットにしまった新幹線の切符を取り出した。
「そうですね。お客様の乗るのぞみは、これですね」
駅長さんは僕の切符を一瞥してから、目の前の新幹線を指差した。
「あっ、そうなんですね、これが僕ののぞみなんですね。理解しました」
僕も同じように目の前の新幹線を指差した。そしてまた、ゆっくりと頷いて、切符を返してもらった。
「だ・い・じょ・う・ぶ・で・す・か?」
駅員さんは一文字づつ区切って話しかけてくれた。俺が足を捻挫していることに気づいたのだろう。親切な人だ。
「大丈夫です。一人で乗れます。ありがとう。センキュー」
なぜかセンキューと口から出た。そういったほうがいいのかなと駅長さんは、俺に思わせた。
俺は新幹線に乗るために靴とサンダルを脱いだ。
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