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村本を探す手段を思案しているうちに、いつの間にか眠り込んでしまったらしい。
カーテンの隙間から朝陽が差し込んでいた。
立ち上がると天井がぐるぐると回った。私は腰をおろし、目を閉じてしばらくじっとしていた。予想以上に神経が参っていたのかもしれないが、村本の状況よりはマシだろうと自分を鼓舞した。
掃除機は死に絶えた生き物のように床に横たわっていた。
私は深呼吸をして椅子から離れた。
<分解修理してはいけません>の警告文ラベルが目に止まった。
村本の居場所はラベルの深奥に潜む魔物と対峙すればわかるのだろうか。ホースを切除したくらいで、本体が不能になるとは考えにくかった。
つま先で掃除機を蹴飛ばしてみる。
反応はなかった。
躊躇いがちにスイッチを入れてみた。
かちり、と乾いた音がしただけである。
何の気なしに壁の時計を見ると、私のいつもの家を出る時間だった。今日は、会社は休日ではない。カレンダーも平日である。にわかに現実に引き戻された私は、戸締りだけをして村本の住処をあとにした。
村本本人の自力生還を祈るしかなかった。
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