最悪の時

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3  三日経過した。  村本からの連絡は途絶えたままである。  その間に、私は美穂へメールと電話を入れたが返信はもらえなかった。留守番電話サービスとメール保管メッセージだけだ。  こうなったら美穂の自宅へ直接行くしかないかな。  私は勤務先を退社すると、そのまま美穂の自宅へ向かった。  彼女が住んでいるマンションは八王子にある。  東京駅から快速で一時間ほどの距離だ。  言いようのない不安が胸の奥をよぎった。  落ち着こうと思って椅子に座り、目を閉じた。  電車の揺れ混ざって、学生風の男女の会話が耳に飛び込んだ。   「この間ネット見てたら粗大ゴミの話があったよ。ほら、あなた、今度引っ越しするでしょ?」 女が喋っている。「でかいゴミ捨てるときは気をつけた方がいいよ」 「ああ、知ってる、知ってる」男が笑いながら答えた。「ゴミ捨て場に掃除機が落ちていても拾ってはいけませんってやつ。拾った人は行方不明になってしまうハナシだよな」 「なーんだ、知ってたの?」 「最近、ネットで噂になってるよ。誰が使ったかわかんねえ掃除機、汚くね?おれは、拾わないけど」 「そうだよねえ」女も笑いながら相槌を打っている。「掃除機だからさ、人間も吸い込んじゃうんだよ、きっと。でも人間って掃除機の中に入らないよねえ、サイズ的に。あはは」  二人の話をもっと聞きたかったが、途中の駅で降りてしまった。  インターネットで拡散しているらしい。私は書き込んだ覚えはなかった。  噂の真相を知っているのは美穂だ。美穂がネット上に面白半分に掃除機のことを吹聴したのだろうか。事実なら彼女との連絡がつかないのも納得できる気がした。  はたして本当にそうなのか。  私は上着のポケットからケータイを取り出した。ネットニュースの見出しを検索していくと、「身元不明の死体」が目に飛び込んだ。操作する指先がぶるぶると震えた。  青森県の立ち入り禁止区域の砂丘地帯で、半裸状態の男が発見された。発見者は近辺を管轄する自衛隊関係者。なぜそんな所に男性が倒れていたのかは不明。推定年齢25歳から35歳。左腕の一部が切断されていたという。警察は身元確認を急いでいる。  私は人違いであることを願った。  居ても立っても居られなくなり、途中下車して、行き先を変更した。  村本のアパートへ向かった。    
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