最悪の時

5/5
前へ
/21ページ
次へ
 鍵を開け、中に入った。  むっと異様な悪臭が鼻孔をついた。  居間の床に、血まみれの左腕の一部と赤く染まった工具類が転がっていた。  そこにあるはずの掃除機がどこにも見当たらない。  言いようのない恐怖感が私を包んだ。がっくりと肩の力が抜けて、どうしていいかわからなかった。  逃げるように部屋を出た。  アパートの階段を駆け下りていくと、その先に数人の男たちが塞いだ。年配の男が警察バッジを私に突きつけた。  長い長い、最悪の時の始まりだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加