33人が本棚に入れています
本棚に追加
パソコンはすんなりと立ち上がった。USBメモリをポートにを差し込んでドキュメント画面を開いて<掃除機>に関する文言を探した。
拾った掃除機(タンデム式)
おそらくこれだ、クリックする。
前後左右から撮影された掃除機の写真が画面いっぱいに広がった。画像の脇に<掃除機に関するレポート>のリンクがあり、そこをクリックした。画像が消えて、日記風の文面が現れた。
3/25日 ゴミステーションで中古の掃除機をパクった。ご自由にお持ちくださいとあったので持ち帰った。使えなければもとに戻そう。
3/27火 掃除機、予想以上に性能が良い。これを捨てるなんて勿体ない。
3/30金 掃除機から変な煙が出る。故障かと思ったが違った。
3/31土 掃除機使用中に金縛りにあった。背中を誰かが撫ぜている感触。
4/1日 もう一度試してみた。掃除機を動かすと、俺の全身がナニカにくるまれているようだ。ナニカの姿は見えないが、ナニカがそこにいる気配がする。幽霊なら怖いと思うが、今は怖くない。今日は三回も掃除機を動かした。
4/2月 会社から帰ってすぐにスイッチを入れる。いつも背中をマッサージされているみたいなので、今日は体の向きを変えてみた。胸、腹、あそこまで、見えない手に触られている気分だ。気持ちいい。射精しそうだ・・・これでは掃除機中毒になりそうだ(笑)
4/15日 友人の五十嵐が遊びに来る。例の掃除機を見せた。奴の反応はイマイチ。
4/21土 愛おしい。スバラシイ!
4/25水 恋をした!
私は思わずパソコンから身を引いた。
こいつ、何を言ってるのか、わかってるのか。
私は毒づいた。
全身がかゆくなるような強烈で露骨な文が悶々と綴られている。
その問題の掃除機は、部屋の壁にひっそりと立てかけたままになっている。
何の変哲もないありふれたコードレス掃除機。
村本はこんな機械に惚れたというのか。
異常としか言いようがない。
私はキッチンへ行き、水道栓をひねって水を出した。
今は六月。室内はかなり蒸し暑かった。
顔を洗い、水を飲ませてもらった。少し頭がすっきりしたので、また寝室兼居間に戻って、日記の続きを読んだ。
4/30月 彼女との関係は良好だ。床のゴミも綺麗に掃除してくれるし、夜の生活も申し分ない。
私は溜息をついた。
彼女だと?
最初のコメントを投稿しよう!