無限のキャンバス

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無限のキャンバス

 そろそろ小学校にあがる娘の奈央(なお)は、公園で遊ばせる(たび)に色々覚えてくるようになってしまった。特にイタズラ。最近は傍若無人(ぼうじゃくぶじん)ぶりに拍車(はくしゃ)がかかっていて手を焼いている。最初、私がわざと引っかかって大げさにリアクションしてあげたら、それに味を占めてしまった。そのせいもあってか、一番被害を(こうむ)っているのは母親である私だ。奈央が何かを隠すようにクスクス笑っている時は、おちおちリビングのドアも開けられない。趣味のジグソーパズルを何度破壊されたことか。  どうやら公園に集まる子供たちの間にイタズラの武勇伝(ぶゆうでん)を語ったり、新しいアイディアを出し合うギャングのような集団が出来上がっているらしい。奈央もそんな悪の組織で自分の地位を着々と確立している。今日も私たちの目を盗んでヒソヒソ次の悪事を(くわだ)てているに違いない。まったく困ったもんだ。  夫は創造性があっていいじゃないかと言うけれど、後片付けをするこっちの身にもなって欲しい。そんな呑気(のんき)なことを言っていたら、そのうちこの家の食物連鎖(しょくもつれんさ)の頂点は奈央になってしまう。
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