第四章 毒親からの解放のために。

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母は日に日に長距離を歩けなくなっていった。 「歩かないから筋力が弱っている」と言えば「そんな訳ない。病気だ」と言い張る。 わたしは、あらゆる病院に連れて行きいろんな検査をしてもらった。 結果は一緒だ。 なんの異常も出ない。 ある脳外科の先生に「先生、筋肉を食べる虫がわたしの体に入っていて筋肉が減ってるって言いましたよね?」と言うこともあった。もちろん先生は否定した。 その後わたしに母は言う「あの先生は嘘つきよ。筋肉食べる虫が体の中にいる!って話したもの。」 話の断片断片だけを覚えていて、それを伝言ゲームのように組み立てたのか? どんな検査をしても異常はなかった。 アルツハイマーなどの認知障害もなかった。 ただ、筋肉がなく痩せ細った寝たきりのような足を見て先生達は驚いた。 まだ60前半の主婦がまさか料理もほぼしなく買い物(外出)にもほとんど出ず、毎日ほぼトイレと風呂の往復しかしてないなんて知るわけもないのだから。 母は以前わたしが言っていた心療内科に行くと自ら言った。 心療内科の先生は穏やかで、優しい口調で母の話を聞いていた。わたしが居ないと出来ない話もあるだろうとわたしは、途中退出した。 母は、わたし以外の誰かに初めて胸のうちを話したのだろう。少し穏やかになった。 そして先生は言った。「ここで出すお薬は飲酒しては効きません。やめてくださいね。そうすれば足もなおりますから」と。 そう、心療内科で出されていた薬は精神安定剤だ。睡眠導入剤のようなふわふわした感じになるのだ。 初めはお酒を飲まなかったり減らしたりしたようだが、母は結局お酒をやめることはなかった。 精神安定剤、睡眠導入剤、アルコールを同時摂取し、夜トイレに間に合わなかったり、転倒し頭を打つことは日常茶飯事で。救急車で何度も運ばれた。 転倒するから(薬を飲むと)と心療内科にはすぐに行かなくなった。
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