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世界は黒煙の竜(ドラゴン)【ブラットナイトドラゴン】によって、、まっさらな灰になってしまった。
私は灰を手に取り宙へと投げる。
桜の花びらのようにひらひらと宙を舞って地面へと落ちる。
「やぁ、いい朝を迎えられたかい?」
後方から声を掛けられ振り向く。
彼の名はセルビア。
世界有数の竜退治(ドラゴンバスター)専門者の一人。
わけあって今は行動を共にしている。
「おはようセルビア。
起きるの相変わらず早いわね。」
「そういうお前も早いじゃないか。」
ふあぁ…と大きなあくびをするセルビア。
頬をぺちぺちと叩く。
薄暗かった空はいつの間にか青い空でいっぱいだった。
小鳥たちが青い空の下を無邪気に飛びまわっているのを見て、いつの間にか笑顔がこぼれる。
それにつられて彼も笑みをこぼす。
「よーし、そろそろ荷物まとめるか。
調査も終わったし南にある復興中の都市に向かうか。」
そういって荷物をまとめ始める。
私も自分自身の荷物をまとめようとする。
ふと、足元に一枚の写真に目が留まる。
そこには自分の母親と父親、そして兄の姿と自分自身が写真の中で笑っている。
「母さん…父さん…お兄…ちゃん…。」
いつか、私の目元に涙がたまっているのに気が付いた。
「そうか…もうあの日から五年が経つのか…。」
青い空に視線を向け目をゆっくり閉じる。
脳裏には五年前のことが浮かび上がる…。
~5年前~
満開の桜が咲き誇る四月上旬。
私はあった一人の兄とともに近所の桜を見に行っていた。
「お兄ちゃーん!早く早く!」
大きな桜の下で手招きをする。
ふわっとした風が吹き、桜が舞い散る。
「早いなぁクレハは。」
「えへへ~お兄ちゃんが遅いんだよー。」
地面に散らばった桜の花びらを手一杯に取り、空へと投げる。
花びらは風に乗り空の彼方へ飛んで行く…。
ふと兄が私の頭に手をのせる。
「花びら。ついてるよ。」
そういってついていた花びらを取り、ふっと息を吐く。
ふんわり宙に舞い地面へとゆっくり落ちる。
「そうだクレハ。
前から欲しがっていた家族写真を上げるよ。」
兄はポケットから写真を取り出し、私に渡す。
「ありがとうお兄ちゃん!」
こんな日がずっと続くと思っていた。
そのはずだった。
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