第1章 ~灰色の世界~

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私は灰となった村を見て呆然とした。 ぽろぽろと涙の雫をこぼしながら、周囲の瓦礫を退く。 そして立ち上がり周りを見る。 地面も空も灰色で染め上げられていた。  「クッソ…遅かったのか…」 背後で声がして振り向く。 そこには一人の青年が立っていた。 私はカラカラの喉で必死に声を出す。  「お兄…さん…誰な…の?」  「俺の名はセルビア。   竜退治専門で今は各地を旅しているただの旅人さ。   キミの名は…?」  「私…は…クレハ…。」 すすり泣き、嗚咽を混じらせる。 彼は私の背中をなでる。 少し時間が経ち、気持ちが落ち着くとゆっくり立ち上がりお礼を言う。  「…   ありがとう…セル…ビ…ア…」 だんだんと空は晴れてきて、元の青い空へと変わってゆく。  「セルビ…ア…」  「ん?なんだい?」 少し無言になりながら  「どうして…助けてくれたの…?」  「面白い子だな…   人助けするのに理由なんていらないだろう?」  「そうだね…   うん、そうだよ。ありがとう。」 彼は私を見つめるが  「そろそろ僕は行くね。」 そういって村を出ようと歩き出そうとしていた。 私はなぜか彼の背中を見ていると何処からもなく寂しい思いがこみ上げてきて  「ま…待って!!!」 そういつの間にか叫んでいた。  「もう…この村には家族も…友達も一人もいない…   だから…だから!」 私は涙をこぼした後を顔いっぱいにつきながら前を向いて  「私も…   私も!セルビアと!一緒に!旅をしたい!あなたと一緒に!あなたに!つ  いていく!」 セルビアは少し黙り込んでから  「君は面白い子だな…   もしかしてこの子が神霊様のお告げの子なのか?」  「お告げ…の子?」  「いや、何でもない。   おいでクレハ。一緒に旅をしようじゃないか。」 私はその言葉に兄の面影が重なり、彼に泣きながら飛びつく。  「ありがとう…」 そう何度もお礼を言いながら。 泣き止み、私は前を向いてこういった。  「私の名前はクレハ!   よろしくね!!セルビア兄さん!」  「ああ…よろしくな!」 二人は灰色の世界で染め上げられたこの村で出会った。 これはすべての始まり。 そして二人の始まりだった。
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