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3-4:騙された!
◆◇◆
私を脅すいずみの顔は、目じりを険しく吊り上げて殺気を漂わせながら、口元はにやりと笑う、それはそれは、美しくも恐ろしい顔だった。
--あ、この場合、美しいってのはどうでもいいか。
私は仕方なく、いずみの言うことに従った。
男子からの告白を受けることも、自分が誰かを好きになることも許されない、中学三年の一年間--そう、暗黒の一年間になってしまった。
私は無用なトラブルを避けるために、できるだけ男の子との接触を避けるようにしたの。声をかけられても、つっけんどんに対応したから、プライドが高くてお高くとまってるように見られたと思う。
『高嶺の花』感が出たのは良かったんだけれども、なんて悲しいことなの。
と言っても、まあプライドが高いのは間違いないんだけど。
ここは、『(笑)』とか言うべきところかしら。
◆◇◆
こんな、体中を縛られてるみたいな感覚の毎日は、中学を卒業するまでの辛抱だ。--私はそう信じて、息苦しい毎日に耐えていた。
私は同級生の多くが進学する公立高校じゃなくて、比較的ウチの中学出身者が少ない私立高校への進学を目論んでいたからね。
にもかかわらず。
なんと。
驚くべきことに。
いずみも同じ高校に行くことを知ったのは、進学先である『阿倍学園高校』の入学式で、だった。
体育館での入学式で、いずみの姿を見つけた時には、目が飛び出すかと思うくらい驚いたわ。
いずみも私に気づいて、にやっと笑った。
なんていやらしい笑顔なの。美人のいやらしい笑顔って最低。私も気をつけなきゃ。
しかもクラスまで同じになった!
頭がくらくらと、ぐるぐると回った。
ああ、なんという迂闊。
いずみは中学の卒業式の時には、「公立高校に行く」って言ってたくせに--騙された!
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