【第4章:いずみとの攻防、三たび】

2/8
前へ
/163ページ
次へ
 つぶれたカエルのように無様に道路に這いつくばるいずみを、上から見下ろすと気分がいい。  私は素早くスマホを取り出して、その姿をぱしゃりと激写してやった。両足を広げて倒れてるだけでもカッコ悪いのに、腰の辺りまでスカートがめくれあがっている。  なんとなんと!  いずみは毛糸のパンツを履いているじゃないの。しかもお尻に熊のイラストが入った、小学生用みたいなの。それもしっかり写真に収めた。  よし!これはいずみも、相当恥ずかしがるだろう-- 「痛ったぁ~」  いずみは両腕を伸ばして、上半身を起こすと、地面に座り込んだまま私を見上げた。おでこを地面にしこたま打ち付けたらしく、痛そうに右手で押さえてる。 (バチが当たったんだわ。いい気味)  とか思いながら冷ややかな目で見てたら、いずみの右手の指の間から、つぅ~っとひと筋流れる赤い液体。 「いずみ、血が出てる!」  いくら憎っくき相手でも、さすがに怪我をしてるのは放っておけない。 「大丈夫?」  私は慌ててスカートのポケットから白いハンカチを差し出した。 「ありがとう。ハンカチ、汚れちゃうからいいよ」  いずみは自分の通学カバンからポケットティッシュを取り出すと、額の血を拭った。 「お医者さん行く?」 「大丈夫。かすり傷だから。家帰って、絆創膏でも貼っとく」     
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加