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そう言いながら、いずみは立ち上がって、制服に付いた砂埃を両手でパンパンとはたいた。
良かった。ホントはかすり傷よりは重症ぽいけど、そんなに大したことはなさそう。
周りで遠巻きに様子を見てた他の生徒たちが、ホッとした表情で離れていった。私たちも、駅に向かってまた並んで歩き出した。
「ところでさ……いずみって、毛糸のパンツ履いてるんだね」
さりげなく言ってみた。
「え? あ…見えた? 冷えてお腹の調子が悪いのよね」
いずみは顔を真っ赤にして、あたふたしてる。しめしめ。
「うん、見えたのよ~ しかも熊っ!」
ことさら熊を強調して、私は笑顔で答えてあげた。
「うわっ、恥ずかしい」
普段から、いかにもお嬢様ですって気取ってるいずみだから、恥ずかしさも人一倍のはずよね。
「小学生みたいで、可愛かったよ。みんなに言いふらしちゃおうかなぁ~」
「ええっ? 何言ってんのよ!やめてよ」
--よしよし、かなり焦ってる。ここで決め台詞!
「毛糸パンツのことを言いふらさない代わりに、今後は私のことも暴露しないって誓って!」
ああ、これでいずみの呪縛から逃れられる!
「え? そんなのやだ。誓わない」
私は「へ?」っといずみの顔を見た。真顔だった。
ちゃんと聞こえなかったのかな?
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