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私は勝ち誇った顔と声で、いずみに笑いかけた。いずみは唇をぷるぷると震わせている。
その時いずみが急にスマホに向かって両手を伸ばした。私は素早く手を頭の上に挙げて、いずみからスマホを遠ざける。
いずみの両手はぶぅんと虚しく空を切り、彼女の顔の前で両手が交錯した。
「それを寄越せ!」
「あらあら、お嬢様がそんな荒い言葉遣いをしちゃダメですよ」
私が軽くあしらうように言うと、いずみは忌々しげに睨んだ。
さてさて、どうするかな、いずみちゃん。
「くそっ!」
いずみはお嬢様らしからぬ言葉を吐いた。私の勝ちっぽいわね。
勝ち誇った顔で苦々しげな表情のいずみを眺めていると、いずみは突如にやっと笑った。
そして目にも止まらぬ速さで左手を伸ばしながら、右手でスチャッっとスマホを目の前に構えた!
「あっ!」
いずみの左手は私の膝上20センチの所でスカートの裾を握ると、ぶわっと上に向けてめくり上げた。と同時に、右手のスマホがパシャリと音を立てる。
文字通り、「あっ」と言う間の出来事だった。
いずみ、お見事!
「これをSNSに公開したら、どうなるかしら? 毛糸パンより、生パンの方が百倍恥ずかしいわよ!」
いやいや、そんなことしたら、普通に犯罪ですけど?
私は焦ることなく、冷静にいずみに言い返した。
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