【第5章:恋の予感】

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「青木健太です。一年はB組でした。部活はサッカー部です」  クラスメンバーの自己紹介が始まった。  あまり興味深げにじろじろ見るのは、お嬢様としては相応しくないでしょ。だからできるだけさり気なくチラチラとどんな人なのかを確かめた。   「加賀屋翔です。部活はやってません」  やる気がなさそうに、それだけ言って座った男子がいた。  ボサボサ頭で、長い前髪と覇気のない顔。  あ、あの子! よく私といずみをぼんやり見てた子だ。加賀屋君っていうのね。  どうでもいいけど、ストーカーみたいな性格じゃないことを祈るわ。 「姫松麗です。皆さま、よろしくお願い申し上げます」  自分の順番が来て、私はできるだけ上品な声で自己紹介をした。クラス中が少しざわめいた。 「彼女があの美人で有名なお嬢様だよ」  誰かがひそひそ声で言うのが聞こえる。  あら、私ってそんなに有名なのかしら? 少し気分がいい。  こうして私の新たな一年が始まった。  --とは言っても、何かが大きく変わる訳じゃなかった。  女子たちは遠慮がちではあったけれど、初めは声をかけてくれた。 「あら、よろしくね」     
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