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◆◇◆◇◆
「………」
ここが、街の奴らが言うところの、“悪魔の棲家”。
神隠しが流行っていたのなんて100年も前だというのに、あるのかないのかわからないような伝承を恐れて、誰も寄り付かなくなってしまったという、あわれな森…。
「…なんだよ、綺麗な所じゃん」
軽く苦笑し、誰にともなく呟く。
父親の転勤でこの街に引っ越して来たのは、まだ小学生の頃だった。
俺も引っ越して早々に“悪魔の棲家”の話を教え込まれ、決して近付いてはいけないと散々釘を刺されたものだから、この場所に足を踏み入れる日が来るとは考えたこともなかった。
「まあ、興味はあったけどさ。
行くなって言われたら行きたくなるのが人間ってもんだよな」
誰も居ないのをいいことに、大声で独り言を言いながらそこらをうろつき回る。
…特に変わったところはない。
「う~ん…
せっかくここまで来たけど、今日のところは収穫ナシって感じだな。
ま、これで俺が悪魔に捕まって“眠り姫”になっちまったら元も子もない。
ここに何の手がかりもなさそうなら、さっさと退散しますかね~」
踵を返して、“悪魔の棲家”から離脱しようとした。
――その時。
「誰か居るんですか?」
「…えっ?」
……
…!!
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