第一部 リラ編 * 序章

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「………」 「………」 紫色の瞳が、俺をじっと見つめる。 何に例えたらいいかわからない、今まであまり見たことのない、不思議な紫。 …これは、何の色なんだろう……… 「誰かに似ているなんて、はじめて言われました」 「…え?」 1人でぼんやりと考えていると、紫の瞳の彼は買い物袋を重そうに抱えたまま、――俺に向かってふんわりと微笑んだ。 「よくわからないけれど、なんだか嬉しいです」 (嬉しい…?) 「?  そうか? そりゃよかった……」 知らない奴に似てると言われて、嬉しいものなのだろうか? 変わった奴……。 「その制服ってことは…同じ学校の人ですよね?」 「…ん? あー、そうだな。俺2年だけど」 「僕は1年です」 「あ~、それならお互い知らなくて当然だな」 ウチの学校は、一体誰が何の方針でこんな風にしたのか不明だが、学年ごとに校舎が完全に別離されているのだ。 共通のエントランスすら持たないもんだから、他学年なんてもはや、ヨソの学校同然だ。 部活でもやっていない限りは、1年生と2年生が顔を合わせることなど、まず滅多にない。 (そっか……  1つ下の学年に、こんなにあいつそっくりの奴がいたんだな…) そう思った時、俺は無意識に声に出して呟いていた。 「なんか、偶然とは思えないな」 「…?」 きょとんとした顔で俺を見つめるそいつのことを、なぜだかもっと知りたくなった。
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