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side.淳平 1
「……よし!」
洗面所に篭ること三十分。
鏡に映った自身の姿を入念にチェックして、淳平はキリッと口許を引き締めた。
今日から新学期。
待ち望んだ日が、とうとうやってきた。
淳平には、中学の頃から密かに抱いていた夢がある。
小さい頃からアニメや漫画、ゲームが大好きだった淳平は、気付けば一人で部屋に篭っていることが多い子供だった。その為、小学校時代から「暗い」「うざい」などと、学校では苛められてばかりだった。
確かに他人とのコミュニケーションは得意ではないのだが、別に周囲に迷惑をかけたわけでもないのに、苛められることをずっと理不尽に思っていた。なのに、それを「嫌だ」とも、「やめてくれ」とも言えずにいた。
だが、そんな自分も今日までだ。
ずっと願い続けていた夢が、やっと叶う。
数年越しの夢───『高校デビュー』が……!
高校進学を機に、新しい自分になる───淳平は、ずっとそう心に決めていた。
とはいえ、趣味はなかなか変えられない。相変わらず、アニメも漫画もゲームも好きだし、好きなものを嫌いにはなりたくない。
だったらまずは見た目から。
手始めに、眼鏡をコンタクトに変えた。
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