side.淳平 2

3/8
123人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
 だからここは、平和的に勝負を持ちかけるべく、携帯サイズのオセロを用意してきた。  腕力には全く自信はないが、オセロなら淳平はそこそこ自信がある。昔から家族にも滅多に負けたことはないし、たまにするネット対戦でも勝率は七、八割。これなら仮に顔も力も敵わなくても、いい勝負は出来るハズだ。  タテ・ヨコ・ナナメ、どこからでもかかって来い、という思いでいたが、もしも楠木が話も聞かずに殴りかかってくるような、凶暴な相手だったらどうしようか。  多くのI高生たちの目の前で、無様にふっ飛ばされるなんてゴメンだ。それに何より、殴られて痛い思いをするなんて絶対にイヤだ。父親にも殴られたことないのに。  目の前の眼鏡少年が楠木を知っていると聞いて、淳平はカバンに入っていたノートを一枚破ると、その場で楠木宛てに手紙を書いた。『夕方五時に〇〇公園で待っている』という旨を伝える手紙。  ここに来て本人と対峙するのがちょっと怖くなったとか、大勢の生徒の注目を浴びるのは避けたいなんて気持ちは、これっぽっちも無い。これはあくまでも、年上である淳平の余裕と配慮だ。  指定した公園が淳平の自宅の近所なのも、何かあったときの為の保険じゃない。丁度良い場所がたまたま思い浮かばなかっただけ。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!