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……ひたすら二時間、公園で暇を持て余しただけだった。
そこから今に至るわけだが、この日ももう既に楠木を待って一時間が過ぎようとしている。いい加減、読まずに食べてるのかと腹が立ってきた。
それとも何か。さすがのイケメンも、年上からの呼び出しには少しくらい怯んだりするんだろうか。
もしそんな可愛い一面があるなら、オセロの先手か後手は、楠木に選ぶ権利を与えてやってもいい。これも年長者たるものの気配りだ。
一時間遅刻されていることも忘れ、得意げに腕組みしながら一人でニヤニヤしていると、不意に背後から静かな足音が聞こえてきた。
ほんのちょっと気が弛んでいたので、ビクッと大きく肩が跳ねてしまった。
気付かれていませんようにという思いと、とうとう来たのかという思いが混ざって、緊張なのか何なのか、よくわからない動悸がする。
第一声は何と言ってやるべきか。
「待たせやがって」……いや、これだと年上らしい余裕がない。むしろ「よく来たな」くらいの落ち着きを見せた方が───。
そんなことを考えながら振り向いた先に立っていたのは、予想したイケメンではなかった。
歳は二十代後半くらいだろうか。髪が長くて綺麗な顔立ちの見知らぬ女性が、淳平を見据えて立っている。
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