side.楠木 1

2/6
123人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
 だったら、身長とか? 190センチを超えている楠木は確かに長身ではあるが、男子バレー部には2メートル級の生徒が何人か居るからそれも違う。  他に『トップ』と言われて思い当たることといえば、一学期の期末テストの結果が一位だったことくらいだろうか。  けれど楠木の成績が良いのは、夫婦揃って教師という両親の教育の賜物だと思っているし、たまたま期末では学年一位だっただけで、校内一かと言われたらそんな自信はない。  仮に『トップ』がテスト結果を意味しているとしても、『強い』って、何が? テストに強い、ってこと?  でもそれだと、その先の文章と繋がらない気がする。図書館ならまだしも、公園で成績を競い合うようなことはないだろう。  だとしたら、『強い』と聞いてピンとくるものは、楠木が所属しているバスケ部くらいだ。  I高男子バスケ部は、インターハイ常連の強豪と言われている。有り難いことに楠木は一年にしてレギュラー入りさせて貰っているが、バスケはチームスポーツなのだから、別に楠木だけが突出して強いというわけでもない。  なのにどうしてこの手紙(という認識でいいのか不明だが)の差出人は、楠木のことを『I高トップで強い』なんて思っているのだろう。  おまけに『勝負』と書いてあるのに、肝心の日付が書かれていない。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!