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手紙の意図はわからないが、さすがに二度もすっぽかす相手には、勝負する気も失せるだろう。……こんな奇抜な手紙の送り主には、一度くらい会ってみたかったけれど。
罪悪感と、少しの落胆も一緒に、楠木は封筒をハーフパンツのポケットに押し込んで、部員たちの集まるコートへ戻った。
彼からの手紙は、もうそれで途切れるだろうと、楠木は思い込んでいた───のだが。
『 これは果たし状です
見たからには
夕方五時に ××市立図書館裏の〇〇公園に来ないと
大変なことになります
それがイヤなら勝負してください 』
まさかの三通目の手紙が、翌日またしても放課後の体育館へ届けられた。
果たし状というより、不幸の手紙みたいになっている。
差出人の彼は、一体どこを目指しているんだろう。
『大変なこと』って、なにが? っていうか、誰が?
会ったこともないはずなのに、そんな子供だましの脅し文句(?)を使ってくるのが何だか微笑ましくて、つい口許が弛んでしまった。
でもやっぱり、連絡先を書き忘れている痛恨のミスには、気付いてくれていないらしい。
まだ彼が楠木を待ってくれていることが嬉しい反面、それに応えられないことが酷くもどかしい。
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