side.楠木 2

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 どうせ門の前まで来ているのなら、いっそ誰かに手紙を託したりせず、直接呼び出してくれればいいのに。そうしたら少しくらいは、部活を抜けて会うことも出来るのだが。  待たせることは嫌いなのに、明日もまた彼からの手紙が来るのだろかと、淡い期待が楠木の胸を掠めた。 『 夕方五時! ××市立図書館裏の〇〇公園で!   待ってます!!   来てください!(痛いことはしません!) 』  楠木の期待を裏切らず、次の日も届いた手紙は、最早『果たし状』ではなくなっていた。  時間と場所には、赤ペンでしっかり線まで引かれている。でも連絡先はやっぱり無し。 「しかも、『痛いことはしません』って……」  込み上げてくる笑いを堪えるあまり、手紙を持つ手が小刻みに震える。  子供を宥めるんじゃないんだから……。  この手紙を加藤に見られていたら、本当に誤解されてしまいそうだ。  もう三日も連続で無視し続けてしまっているのに、どうして彼はこんなにも楠木に執着するのだろう。とっくに失望されていてもおかしくないのに。  破ったノートに綴られた、内容も目的もよくわからない手紙。こんな手紙を書くのは、一体どんな人物なのだろうか。  これまで手紙を貰っても、それを送ってくれた相手がどんな人かなんて、気にしたことはなかった。書かれている内容も、それに対する自分の答えも、いつも決まっていたから。     
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