123人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
どうせ門の前まで来ているのなら、いっそ誰かに手紙を託したりせず、直接呼び出してくれればいいのに。そうしたら少しくらいは、部活を抜けて会うことも出来るのだが。
待たせることは嫌いなのに、明日もまた彼からの手紙が来るのだろかと、淡い期待が楠木の胸を掠めた。
『 夕方五時! ××市立図書館裏の〇〇公園で!
待ってます!!
来てください!(痛いことはしません!) 』
楠木の期待を裏切らず、次の日も届いた手紙は、最早『果たし状』ではなくなっていた。
時間と場所には、赤ペンでしっかり線まで引かれている。でも連絡先はやっぱり無し。
「しかも、『痛いことはしません』って……」
込み上げてくる笑いを堪えるあまり、手紙を持つ手が小刻みに震える。
子供を宥めるんじゃないんだから……。
この手紙を加藤に見られていたら、本当に誤解されてしまいそうだ。
もう三日も連続で無視し続けてしまっているのに、どうして彼はこんなにも楠木に執着するのだろう。とっくに失望されていてもおかしくないのに。
破ったノートに綴られた、内容も目的もよくわからない手紙。こんな手紙を書くのは、一体どんな人物なのだろうか。
これまで手紙を貰っても、それを送ってくれた相手がどんな人かなんて、気にしたことはなかった。書かれている内容も、それに対する自分の答えも、いつも決まっていたから。
最初のコメントを投稿しよう!