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そんな場所に呼び出されたのも、何かの縁なんだろうか。
ペンキが剥げ、片方の耳も少し欠けてしまっているゾウの滑り台が前方に見えてきた。
古びた遊具しかない上にそう広くもないからか、それともだいぶ日が傾いているからか。公園はシンと静まり返っている。
その中央に立つ時計の脇に設置されたベンチの前に、ポツンと佇む人影に気付いて、楠木は思わず足を止めた。
弾む息を整えながら、フェンス越しにジッとその人影を見詰める。
淡い茶髪の隙間から覗く、小さなピアス。そしてK高の制服。その顔には、やはり見覚えがなかった。
───あの人が……?
手紙の内容が強烈だっただけに、もっと風変わりな見た目なのかと思っていたけれど、ちょっと垢抜けた風のどこにでも居る高校生という感じだ。
何年生だろう。同じ一年生? それとも上級生?
楠木が大柄だから余計にそう見えるのかも知れないが、身体つきも割と小柄なのでわからない。見た目で判断するのはどうかと思うが、腕っぷしが強そうにも見えなかった。
……あの人が、あんなネジが数本吹っ飛んだみたいな手紙書いたのか?
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