123人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
ネットでアレコレ検索し、氷でキンキンに冷やした耳朶に、思いきって針を刺した。……本当に貫通したことに驚いて三回失敗したが、今はちゃんと両耳にピアスが光っているから、結果オーライ。
それ以外にも地道に筋トレを繰り返しているし、高校男子にしては小柄な身長を伸ばす為、腹を壊しながらも毎日牛乳を一リットル飲み続けている。お陰で貧弱だった身体に少しは筋肉がついた気がするし、身長も二センチくらい伸びた。
成長期なのだから、この先きっと更に成長するに違いない…と、淳平は信じている。
鏡に映っているのは、黒髪・眼鏡の冴えない淳平じゃない。
ヘアカタログで選び抜いた、ラフに遊ばせた(この言い方は美容師の受け売りだが)茶髪の隙間から覗くピアス。制服のシャツのボタンも第二ボタンまで開けて、物凄く適当にネクタイを締めた、まるで別人のような淳平が居る。
これでもう、「暗い」だの「うざい」だの、そんな理不尽なことは言わせない。
例え中身はオタクでも、明るくて取っつきやすい人気者になってやる。
「ちょっと、淳平ー? アンタ、いい加減学校行かなくていいの? もう八時よー」
「え、やっべ……!」
リビングから聞こえた母親の声に、淳平は慌てて廊下に飛び出した。
「行ってきま───…行ってくる」
咳払いして、敢えてちょっと擦れた言い方にシフトする。見た目同様、行動も口調もイメチェンには重要だ。
最初のコメントを投稿しよう!