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淳平が席に着いても、さり気なく髪を弄ってみても、耳に嵌まったピアスに触れてみても。クラスメイトは誰一人、話しかけてくる気配がなかった。
……どういうことだよ。こんなに変わってんのにスルー? あ、どよめき通り越して絶句? もしくは俺が誰だか最早気付いてない?
確かに一学期はクラスの誰とも喋らなくて存在すら忘れられがちだったし、友達と呼べる相手は一人も居ない。
だとしても、これだけ変化があれば、誰か一人くらい声を掛けてくれてもいいんじゃないだろうか。正直、この手のイメチェンに女子はときめくものなんじゃないだろうかと、若干邪な期待もあったのに。
しかもあろうことかその女子たちは、淳平の変化に気付くところか、何だか普段以上に盛り上がっている気がする。
自分から声をかけてアピールするような真似はしたくないし、そもそも自ら女子に話しかける度胸もないので、淳平は自分の席で必死に聞き耳を立てた。
「……て、まだ一年生なんでしょ?」
「……I高って強いのに、凄いよね」
「……も、トップらしいよ」
喧騒に混ざって、会話の端々が聞こえてくる。
全ては聞き取れないが、どうやら特定の誰かの話をしているらしい。
───I高? 一年?
I高は、淳平の通うK高校と同じ区内にある近隣校だ。
一年で、強くて、トップ?
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